温暖化ショックとオイルショックと (5)

作られた温暖化ショック

オイルショックは石油資源がなくなったから起きたのではない。石油の R/P (Resource/Production) は当時が35年、今は却って増えていて45年である。トイレットペーパーの騒動も紙がなくなったから起きたのではない。トイレットペーパーの生産は安定していた。パニックが発生した後はむしろ生産量は増加していた。マスコミの報道や流言飛語によって不安に駆られ、高値でたくさんのトイレットペーパーが買い占められたのが原因である。

自然現象は常に変わっているのであって、温度、氷河、海面のレベルも常に変わっている。自然現象の変化と人為的な温度の変化とを区別して見分けられる程、我々の科学はまだ進歩していない。実際にパニックを起こすような温度の変化は観測されていない。温度の変化を科学的に説明できるレベルではないので、温暖化を主張する意見は全部主観的である。温暖化ショックもオイルショックと同様、マスコミの報道や流言飛語によって不安に駆られた結果起きているのである。

Google のサイトで IPCC の上に N をつけ "NIPCC" で検索すると “Nongovernmental International Panel on Climate Change” がトップに出てくる。シカゴにある “The Heartland Institute” という民間機関の一部である。個人、民間機関の寄付で賄われているのだろうか、資金源は良く分からない。CO2 による温暖化説及び IPCC の説に疑問を呈する科学的に最もしっかりした機関である。昨年 (June, 2009)、 Climate Change Reconsidered という報告書を出した。868 ページの大書である。 Amazon では $123 もする。しかし、上記のサイトで、全書を pdf のフォーマットでダウンロードできる。普通の人には読みこなすのは大変である。IPCC の 2007 年の報告 AR4 についてかなりのスペースを割いて科学的に論じる。詳細は別にして、こうした本格的な科学的議論がある。

Petition Project (嘆願書プロジェクト) というのがある。IPCC の説に疑問を呈する科学者の署名を募るプロジェクトである。問題の投げかけとして、Environmental Effects of Increased Atmospheric Carbon Dioxide という 12 ページの論文を提示している。れっきとした Peer Review のジャーナルに転載されたものである。こちらの方は、読みやすい。

NIPCC の”Climate Change Reconsidered” の最後に、その Petition Project に賛同する人々のリストがある。748-854 ページにかけて大量の名前がリストアップされている。そのリストを見ると、温暖化の人為説すなわち IPCC 説に疑問を呈する人は決して少なくないことがわかる。現在 31,000 人がサインアップしている。そのうち 9,000 人が PhD である。温暖化が人為的に起きているのではないと考えている科学者が大勢いる。 

Petition Project (嘆願書プロジェクト) は次のことを要求する。

1997年の12月に決められた京都議定書の温暖化に関する合意を拒否するようにアメリカ政府に強く要請する。合意した目標値を達成するために行動することは環境にとり悪い結果を引き起こすものであり、科学と技術の発展の妨げになる。そして人間の健康と福祉の促進をも害する。

二酸化炭素、メタンや他の温室化ガスが地球の大気を破滅的に温めて、気候を破壊するという正当な科学的証拠はない。逆に大気中の二酸化炭素の増加が動植物にとり多くの点で有益だという証拠がある。 

Petition Project (嘆願書プロジェクト) の要求は、大気中の二酸化炭素の増加が動植物にとり多くの点で有益だという。炭酸ガスは安定な化合物のひとつである。炭素、酸素とも外殻電子を過不足なく分かち合っていて、化学結合が強い。通常の条件では、反応性は非常に小さく不活性ガスである。CO2の濃度が高いほど植物の成長は速くなる。下の写真は、異なるCO2濃度での植物の成長の違いを写したものである。

その他、多くの研究結果がある。下記のグラフは、USA の四ヶ所にあった松の年輪から成長速度を 20 年ごとの平均の偏差をプロットしたものである。次のグラフは、CO2 濃度を変えて実際に植物の成長速度を観察したもので、 279 の論文からの結果である。いずれもCO2濃度が高いほど直物の成長速度が速いことを示す。

CO2 は植物にとり不可欠であり、その濃度が高いほど速く成長する。我々を含めてすべての動物は、食物連鎖で植物に負っている。すなわち、CO2 濃度は常識的な範囲内ならば高いほど良い。炭酸ガスは決して公害物質ではない。莫大な金を費やし CO2 を回収して海の底に閉じ込めてしまうのはもったいない。政治を躍らせている源は、曖昧な科学を唱えた一部科学者である。またそれに振り回されているのも科学者、および技術者である。地球の温暖化の原因は CO2 ではないとすると状況は一変する。

今では、多くの専門家が IPCC がCO2を温暖化の原因だとするのはシミュレーションの結果のみで、はっきりした科学的証拠を提示していないと言っている。従って、IPCCの報告をもとに議論するのは、非常に主観的にならざるを得ない。ClimateGate事件 (Nov. 2009)とかHimalayaGate 事件(Jan. 2010)とかの科学的な倫理上の問題がある行為も出てくるのだろう。

ClimateGate事件というのは、「IPCCで中心的存在とされる英国人研究者の疑惑が指摘された」というものである。昨年11月、この研究者が在籍する大学から大量の電子メールなどが漏洩(ろうえい)し、データをごまかす相談個所が見つかった。温暖化を裏付けるのに都合の悪いデータを隠蔽(いんぺい)したと疑わせる文言もあった。HimalayaGate 事件というのは、「IPCCは、2007年に公表した第4次報告書の中で、「ヒマラヤの氷河が35年までに消失する可能性が非常に高い」とした記述は誤りだったとする声明を発表した」というものである。

先に述べたように化石燃料をいくら燃やしてもCO2の濃度は 1,000 ppm 以上になることはない。1,000 ppm 以下の範囲ではCO2の濃度は高い方が人間にとりより良い可能性がある。

CO2は温暖化の元凶だという前提で考えればCO2の濃度は小さい方が良いに違いない。しかし、データは CO2濃度は高い方が人間にとり有益であることを示す。温暖化が人為的で今後も自然のサイクルとは比較にならないぐらい速く上昇していくという前提で考えれば、地球の温度は低い方が良いに違いない。しかし、過去の事実を見ると地球の温度は高い方が我々に有益である。下図に示す過去2000年の温度変化を眺めると、平安時代は地球が温暖な時代だった。

http://www.drroyspencer.com/global-warming-background-articles/2000-years-of-global-temperatures/

平安時代は「桜の開花時期が早かった」とか「稲が豊作だった」とかの記録があるらしい。この時期、ヨーロッパではバイキングが大西洋を渡ってグリーンランドに入植していた。もう少しさかのぼると、5000-3000 BC の時代はもっと暖かくて、この時期に最初の文明が栄えたのである。

(グリーンランド)

温度の上昇により、耕作面積は増えるし、作物も速く大きく成長する。家康が関が原の合戦に勝ったころ、地球には小氷河期が訪れていた。江戸時代を通じて寒冷な気候であった。現在ほど米の品種改良が進んでいなかったから、大小合わせて数十回の飢饉が起こった。元禄、宝暦、天明、天保の冷夏による大凶作は「江戸四大飢饉」と呼ばれる。最近の例では、昨年(2009年)は世界の温度は低かった。日本のコメの作況は、全国平均が 98 の「やや不良」だった。特に北海道は日照不足と低温が響き 91 の不良だったのである。

地球の温暖化は自然サイクルではなくCO2の排出という人為的な結果であり、今後も化石燃料を燃やせば温度は速く上昇すると多くの人が主張する。彼らは、過去120年の温度変化とシミュレーションの結果がそれを示すという。1988年に設立された国連のIPCCは当初から温暖化が人為的な結果だという前提で出発したようである。決まった方法で結果が再現できて始めて証拠と認められる。明確な証拠がなければ、異なる見方があるのが普通である。IPCCには2500人の専門家が関わっているらしい。地球の気象変化という解析の困難な科学に対して、2500人が同じ意見にまとまるのは異常としかいいようがない。IPCCには最初から一つの答えがあってその答えに沿うように活動しているとしか思えない。非常に主観的である。だから、「温暖化ショック」とは人為的に作られたものである。

排出権取引 (Cap and Trade)というのがある。温暖化ガスの総排出量を各主体(国や企業など)に割り当てたうえで,主体どうしで排出枠の一部を取引する。 キャップは排出枠を意味する。京都議定書で定められた温暖化ガスの排出削減目標値を達成するための措置である。締約国どうしが排出量割り当てを取引できる。自国の割当量の一部を他国へ譲渡することができる。 これには莫大な国民の税金を使わねばならない。科学的で客観的な解釈があって初めて、排出権取引を行うことができる。

温暖化の研究は継続していくべきである。しかし、我々の地球について良く分かっていないのに、主観的な結論に従い、排出権取引とかいうものに対して莫大な金を使ってもよいものだろうか。CO2は有益かもしれないのにである。気温が暖かいことも有益である。莫大な金を、全く逆の負の効果があることに費やそうとしている可能性がある。

オーストラリアの上院は、昨年排出量取引をデータをもとに否決した。写真の中の図で赤い線が温度、黒い線がCO2である。温度は1998年にピークを記録して以後下がる傾向があるのに比べ、CO2は上昇し続けていることを示す。(read more)

次は事実である。

    (1) 温暖な温度の方が人間にとり有益であった。
    (2) CO2 濃度の高い方が植物に対して有益である。

温室化ガスは電磁波を吸収して、波長の長い電磁波を出す。一部が地球の表面へ反射される。反射された電磁波は永遠に表面に滞るのではない。いずれは宇宙へ逃げてしまうが、新たな平衡状態になる。しかし、電磁波が素通りするのに比べるとわずかな温室効果となる。

温室化ガスであるCO2の場合、濃度と温度の関係は下図のように対数関数で示される。濃度が倍になると約 0.6 ℃上昇する。

http://homepage1.nifty.com/gfk/Excel-Function.htm

現状のCO2濃度が二倍の約760ppmになると今の温度より約0.6℃高くなる。先に述べたように、恐竜が暴れまわっていたころCO2は4000ppm程度だったものと推定されている。しかし、当時の温度が非常に高かったわけではない。今より約が30%高かったとものと推定されている。変温動物には都合の良い温度だった。これはCO2濃度と温度が対数の関係だからである。

小さな温度の上昇がより水蒸気を蒸発させ、水蒸気の変化または雲の変化がさらに温度を変える。これが、フィードバック効果と呼ばれる。IPCCのシミュレーションでは、定量的な裏づけなしに正のフィードバック効果が計算に見積もられている。この辺のアルゴリズムは素人の第三者には良くわからない。そもそも明瞭な説明がない。フィードバック効果については専門家の間でホットな話題である。専門誌には繰り返し、正のフィードバックと負のフィードバックと両者のデータが示される。やや複雑な統計処理のために我々がはっきりと納得するには難しい。正のフィードバックの場合は上記で示す推定式よりIPCCが言うように地球の温度は高くなる。しかし、フィードバック効果が明瞭に正だという根拠はないのに、IPCCはこれを前提に話を推し進める。これが、温暖化ショックが作られたという一因である。

アラバマ州の大学に Roy Spencer という教授がいる。元 NASA の研究員で衛星から温度の測定などの手法を確立した人である。大学に移ってからも NASA と DOE (Department of Energy) から研究費を受け気候変化の研究を続けている。

複数の衛星が地球表面の高度の異なる温度をくまなく測定している。地球表面の酸素から放出される赤外線を定量することにより熱の放射量が測定される。これを地球表面の温度とプロットすることによりフィードバックが正なのか負なのかがわかる。彼らのグループは 2000 年からデータを取り続けている。以下Roy Spencerの ホームページからの整理である。

Roy Spencer はこのフィードバックの効果を人工衛星からの実測値で 評価しようとした。地表の温度が1℃上がると、地表から3.3 W/m2のエネルギーが反射して出てくる。 地表の温度が上がった時、温度と反射してくるエネルギーをプロットする。フィードバックがない時は傾きが3.3 になるはずである。傾きが3.3より小さい時は温室効果で系外に出てくるエネルギーが小さい、すなわち正のフィードバックと考えられる。一方傾きが3.3より大きい時は負のフィードバックとみなされる。

実測値の一例を左記に示す。結果は傾きが3.3より大きい強い負のフィードバックだった。Roy Spencer は正のフィードバックを想定したIPCCのシミュレーションは現実からかけ離れたものだと言う。たとえCO2の濃度が倍になって温度が上がっても0.6℃よりも小さいということになる。

1988年James Hansen が議会で証言した。その20年後にはこのRoy Spencer が議会で証言している。全く別の視点からの証言である。

負のフィードバックに加えて太平洋10年周期 (Pacific Decadal Oscillation) という現象が彼の論点である。

1998年は近年で一番熱い年であった。それがさらに温暖化の問題を深刻化した。エルニーニョの影響だと言われる。決してエルニーニョが原因ではない。エルニーニョは結果である。何が原因でエルニーニョが起きるのか良くわからない。温暖化に限らず、気象変化の原因は良く分かっていないから、観測で得た情報を蓄積していく。エルニーニョと似た現象に太平洋10年周期 (Pacific Decadal Oscillation, PDO) がある。PDO は約10年おきに北太平洋の海水の温度が熱くなったり、冷たくなったりする現象である。Roy Spencer はPDOが特に温暖化を解析するのに重要だと説く。以下彼のサイトからの要旨である。

PDO指数(気象庁のサイトに説明があるのだが私には物理的意味がよくわからない)で北太平洋の温度変化を整理すると下記のようになる。

30年周期で温度が変化しているのがわかる。この変化はCO2とは関係なく起きていて年輪の変化の推測から1600年代まで遡れるという報告もある。1940-1977年までは寒冷化するかも知れないといわれた時期であり、1977年以降逆に温度が上がり始めた。このサイクルに呼応して、1998年をピークに温度は水平かやや下降気味である。2008年にこのサイクルは逆転した。温度変化が表れるまで2年ぐらいのずれがあるので、今年あたりから温度が下降していく現象が見られるかもかもしれない。

アラスカ大学の赤祖父俊一氏が、準周期変動と呼んでいるのはこのPDOの周期のことである。彼は大きな流れにこのPDOを加味して下記のような温度変化を予想している。IPCCの予想から現在すでに外れている。

Roy Spencer はアラバマ大学のEarth System Science Centerに所属する。そこのディレクターは John Christyという人である。ディレクターというよりRoy Spencer の共同研究者と言ってもよい。この人はIPCCのメンバーとして最初から参加している。IPCCの第一回の報告書ではリーダーとして報告をとりまとめた。しかし、IPCCの見方に批判的な人である。

John Christyは、昨年の2月に下院の財源に関する委員会(Ways and Means Committee)で次のような証言をしている。

(1) CO2排出量は多いので、1000基の原子力発電所を2020年までに作るとする。これをIPCCのモデルで計算すると2050年まで0.07℃、2100年までには0.15℃温度が上昇するだけである。
(2) 1988年、議会における James Hansen の証言でシミュレーションの結果が示された。1977年から始まった衛星からの温度の測定結果と比較するとかなりのずれがある。これはシミュレーションで大きい正のフィードバックの効果を考慮して計算しているからである。

(3) IPCCの第四報で21個のモデルを使って温度変化の傾向が示されている。衛星からの温度の測定結果に基づいた温度変化の傾向はいづれのモデルよりはるかに小さい値である。
(4) カリフォルニアの都心部の内外で温度の実測値を比較した場合、過去90年間、外側では温度の変化はない。都心部では昼間の温度は上昇しているが、夜間では変化がない。平均すると温度が上昇したかのような印象を与えるが、これはCO2による影響ではなく、開発に伴う人為的な影響である。

また彼は、査読のある論文誌Energy & Environment (Vol. 20, 2009) で最近の温度変化を統計的に解析していて次のように結論づける。1998年の気温上昇はエルニーニョの影響であるが、この影響を除いた全体の変化は北半球の赤道以外の気候変動による。CO2による影響は非常に小さく、フィードバックの効果もみられない。IPCCのメンバーである専門家が、結論の最後で次のように述べる。解析結果は2007年のIPCCの報告「20世紀に見られた気温上昇は、温室化ガスの影響だというのは、ほぼ確かである。」ということと矛盾する。

整理すると、

    フィードバック効果についてははっきりした定説はない。

だから、IPCCの2500人の専門家が正のフィードバックに合意して話を進めること自体が異常である。

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